相続財産調査にかかる費用や方法は?税理士に頼むメリットまで解説

家族や親族が亡くなったあと、故人の財産は遺族間で相続するのが一般的です。

遺された家族は、遺言書に従ってスムーズに相続をスタートさせます。

しかし中には、自分の財産を誰にも知らせずに突然死亡してしまう人も。

故人の遺言書がない場合、遺された家族は財産をすべて特定しなくてはいけません。

「貯金や不動産はどこにある?」「財産があるかどうかもをわからない…」と遺族が途方にくれないために、「財産調査」といった遺産を調べる方法があります。

この記事では、財産調査で見つかりやすい遺産と、財産の特定方法を詳しく解説。

マイナス財産(借金)が見つかった時の対処法や、相続人が不利になるケースまでわかりやすく紹介します。

目次

故人の財産はエンディングノートやメモ書きがない限り簡単に見つからない

財産調査とは、故人の遺産がどこにどの程度あるのかを、徹底的に調査することです。

遺言書がない場合の相続は、法定相続人が公平に遺産分割するのが一般的です。

しかし故人の財産は、正直エンディングノートやメモ書き等がない限り、簡単に見つかりません。

財産調査で多額の預貯金や不動産があれば、相続税を支払うケースもあります。

他にも、借金(マイナスの財産)が発覚すれば、借金を相続するか相続放棄するかを決断しなければいけません。

故人の財産を自分が相続・相続放棄するかどうかの選択は、相続開始を知ってから3ヶ月以内と決められています。

しかし、「正直3ヶ月で財産調査は全部できない!」と事前にわかれば、家庭裁判所に申し立てをして3ヶ月の期間を延長できます。

他にも、プラスの財産が多い場合は、相続税の申告が必要です。相続税の申告期限は、相続開始後10ヶ月以内。

相続税の申告期限切れや申告不足があると、罰金を命じられるため、財産調査は後のばしにしないよう気をつけましょう。

故人の財産調査を調べるなら資料やパソコンに残っているメールが手がかり

故人の財産として想像できるものは、「預貯金」「自宅」「車」「株式」等があります。

預貯金は、通帳さえあればどこの金融機関か把握できますが、不動産や株式は故人の遺品から特定しなければいけません。

自分で財務調査をする場合、故人の契約書・売買した内容がわかる資料を、家の中から探し出します。

資料の手がかりとしては、携帯電話やパソコンに残っているメール、棚の中の書類、郵便物等です。

故人宛の郵便物からは、ある程度最近の情報を入手できます。郵便物・書類・メール等を探し出し、記載された連絡先へ故人の財産について聞きだしていきます。

どんな財産を探し当てたら正解?プラスになるものからマイナスになる借金まで把握する

財産とはいえ、相続が関係する財産は多くあります。

ここでは、財務調査の対象となる財産の種類を紹介します。

調査の対象となる財産の種類

  • 預貯金
  • 株式(有価証券)、仮想通貨、保険積立金、ネット証券、ゴルフ会員権
  • 持ち家、土地(田畑・山含む)、借家権、借地権
  • 貴金属、美術品、骨董品、家財道具
  • 自動車、バイク
  • 未支給給与、貸付金
  • 借金、ツケ        等

上記に挙げたものは、故人の書類や資料から把握できるものが多く、かつ、財産調査の対象となる財産です。

財産としてプラスになるものから、マイナスになる借金やツケの把握までしなければいけません。

マイナスの財産を相続しないための対処法もあるので、借金が見つかっても心配せず、徹底的に財産の洗い出しをしましょう。

次項では、故人の財産を調査するために必要な書類を紹介します。

故人の相続人である証明ができない場合は財産調査のスタート地点に立てない

相続に関する財産調査には、故人と相続人との関係性を証明する書類が必要です。

【必要な書類一式】
・故人(被相続人)の死亡が記載してある戸籍謄本
・調査する故人(被相続人)と相続人の関係がわかる戸籍謄本
・調査する相続人の身分証明書(運転免許証や保険証など)

「自分が故人の相続人です」といった証明ができない場合は、財産調査のスタート地点すら立てません。

基本的には、戸籍(除籍)謄本が必須書類となるので、必ず役所へ出向いて戸籍謄本を申請しましょう。

よく見つかる財産の種類と調べる手順をわかりやすく紹介

故人が遺しているであろう財産とはいえ、預貯金だったり不動産だったりと何があるかわかりません。

ひとつひとつを探し当てていくには、かなりの時間と労力がかかります。

しかし、相続人がいる以上、故人の財産調査は必須です。

ここでは、よく見つかる財産の種類と手順をわかりやすく紹介します。

①預貯金を調べる方法

順番 項目 作業内容
1 通帳・キャッシュカードを見つける 財布や貴重品棚から、金融機関の通帳やキャッシュカードがないか確認
2 インターネットバンクで口座がないか確認 携帯電話やパソコンで、インターネット口座がない確認
3 各金融機関へ問い合わせ
預金残高の照会
金融機関で故人の預金残高を照会してもらうには
「相続人である身分証明書」もしくは「戸籍謄本」を持参
4 預貯金の残高がない場合、
不正引き出しがないか確認
  • 預貯金の入出、入金履歴の確認をする
  • 死去した前後で多額の引き出しがあった場合、弁護士に相談
5 相続税の把握と申請
  • 預貯金は相続税の対象となるため、税理士に相談して相続税の把握
  • 手続きを行う

通帳やキャッシュカードが見つからない場合でも、銀行では口座があるかどうかの問い合わせが可能です。

故人の相続人である事実の証明が必要なので、「相続人である身分証明書」もしくは「戸籍謄本」を持参してください。

通帳が見つからない場合は、思い当たる銀行へ手あたり次第足を運ぶ必要があります。

面倒な作業ですが、故人が大切にしていた預金は必ず見つけだしてあげましょう。

預金残高によっては、相続税の対象となり得る場合も。
預金が見つかった場合は、預貯金残高証明書を金融機関に申請してください。
その後専門家に相談し、相続税の申告が必要か判断してもらいましょう。

②不動産を調べる方法

順番 項目 作業内容
1 不動産の所在地を把握 不動産の所在を証明できる書類が保管されていないか確認する
(不動産の売買契約・不動産登記事項証明書・権利証等)
2 不動産を証明できる書類がない場合
  • 不動産がある市区町村役場へ行き、相続人とわかる戸籍謄本を持参の上故人の不動産がないかを調査してもらう
  • 市区町村ごとで作成した同名義の不動産を一覧で把握できる「名寄帳」を取得する
  • 固定資産評価証明書を取得し、非課税の保有物件の確認

名寄帳」には、固定資産税評価額をはじめ、登録された土地や納税義務者がまとめられています。

名寄帳の写しが入手できれば、故人の不動産が把握できます。

ただし、名寄帳は不動産がある市区町村の情報しか載っていません。自宅以外の市区町村に不動産がある場合は、所在する土地の名寄帳を確認してください。

他にも、不動産登記事項証明書を取得する方法があります。

登記事項証明書は管轄の法務局が発行しているので、直接窓口へ行くか、オンラインで申請して取得しましょう。

不動産を調査するときは、必ず「相続人である身分証明書」もしくは「戸籍謄本」を持参してください。

③株・FXを調べる方法

順番 項目 作業内容
1 取引案内を探す 株やFXの書類やメールを探し出し、
口座のある証券会社やFX会社を特定する
2 各会社に問い合わせる 取引残高報告書を申請する
3 取引が不明な場合 証券保管振替機構へ開示請求する

株式・FX等に関しては、年間の取引報告書が毎年郵送されてきます。しかし、相続税や相続放棄の申告期間までに、郵送が間に合わない可能性も。

申告期限内に証券会社やFX会社が特定できなかった場合、証券保管振替機構に対し、登録済加入情報の開示請求ができます。登録済加入情報の開示請求は、株式等の口座を開設しているかどうかがわかるシステムです。

証券保管振替機構では、郵送で株式等の開示請求が可能となり、請求後には「登録済加入者情報通知書」が送られてきます。

登録済加入者情報通知書には、あらゆる口座の有無が記載されているためとても便利です。

もし取引している会社があったら、早めに取引残高の申請を行いましょう。

④マイナスの財産(借金等)を調べる方法

順番 項目 作業内容
1 返済証明書を探す 金融機関からの督促状や返済証明書、
消費者金融のキャッシュカードがないかチェック
2 住宅ローンがないか書類を探す 金融機関からの住宅ローン通知書を探す
3 書類が見つからない場合 信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に
故人の信用情報の開示を請求する
4 マイナスの財産が
見つかった場合
  • 金融機関へ借金残高の問い合わせをする
  • 相続人はマイナス財産を返済するか、
    相続を放棄するのか判断する

見過ごせない財産調査として、マイナスの財産(借金等)があります。

消費者金融からお金を借りていないか、金融機関に未払いのお金がないかを必ず調査してください。

マイナス財産を簡単に調査できる方法は、信用情報機関(CICJICCKSC)に故人の過去の信用情報を求める方法です。

過去のローンやキャッシングの契約情報を把握できるので、故人のマイナス財産がどこにあるのか素早く把握できます。

多額の借金が発覚した場合、相続人は借金の相続を放棄できます。

プラスの財産とマイナスの財産を比較した際、マイナスの財産が多ければ相続放棄が可能です。

マイナスの財産が発覚したら、いち早く専門家に任せましょう。最善の方法で、相続人の経済的負担を軽くしてくれます。

弁護士・税理士・行政書士に頼む場合の財産調査でかかる費用目安

相続の財産調査では、さまざまな土地の役所へ足を運ぶ必要があるため、大変な手間と時間がかかります。

相続人の中には、「自分で財産の全てを調査できる自信がない…」と、故人の財産調査を専門家に任せる人も。

ここでは、財産調査を専門家に依頼する場合の費用とメリットを合わせて解説します。

専門家 費用の相場 メリット
弁護士 20~30万円 遺産(相続財産)分割でもめている場合、
財産調査だけでなく、調停や裁判まで対応が可能
税理士 10~30万円 財産調査が完了した後、
相続税の申告手続きまでそのままお任せできる
行政書士 数万円~ 費用を安く抑えられる

財産調査の主な費用の目安は上記の通り。

しかし、依頼先である弁護士・税理士・行政書士の事務所では、依頼内容や業務量によって費用は大きく前後します。

【相続人同士のトラブルは弁護士がおすすめ】
相続人同士のトラブルで公平な遺産分割ができない場合、裁判や調停の対応が可能な弁護士がおすすめです。相続人の間でトラブルを抱えている人は、弁護士に依頼して公平に解決してもらいましょう。
【相続税の申告があれば税理士がおすすめ】
故人の預貯金や遺産が多額になる場合は、あらかじめ税理士に依頼しましょう。税理士は、相続税申告のプロです。遺産分割や名義変更をした後は、相続税の申告が必須。相続税では、数百万円から数千万円の税金を支払うケースも少なくありません。税金を上手に支払うために、税理士の力をかりましょう。
【低価格で調査したいなら行政書士がおすすめ】
行政書士の業務範囲は多岐にわたりますが、中には相続専門の行政書士もいます。弁護士や税理士に比べ、行政書士は比較的低価格な印象です。相続トラブルや、多額の相続税が発生しない場合は、行政書士に依頼するのもいいでしょう。

相続の財産調査を専門家に依頼すると、どうしても多くの費用がかかります。しかし、相続のトラブルがある場合や相続税が発生する場合は、弁護士や税理士に任せるのがベスト。

複雑な法的業務や事務作業は、相続の専門家に依頼しましょう。

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マイナスの財産が多い場合の対処法は?相続放棄の方法を伝授

財産調査中にマイナスの財産(借金等)が見つかった場合、相続人はマイナスの財産を返済するか放棄するかの判断をしないといけません。

財産調査の結果、プラスになる財産よりもマイナスの財産(借金等)が上回った場合、相続人は相続放棄の手続きができます。

相続放棄とは、相続人が継承する財産や権利、義務を一切受け継がない意思表示です。

相続人が相続を放棄をすれば、故人の負債を返済する必要がありません。

相続放棄は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ行き、申述をおこないます。

「財産調査に時間がかかって3ヶ月以内にマイナス財産まで見つけられない」と判断した場合は、相続放棄の申述期間延長手続きが可能です。

専門家に依頼しても財産調査にはかなりの日数がかかるので、早めに相続放棄の申述期間延長手続きを推奨します。

相続した後にマイナスの財産が見つかった場合の対処法は?

財産調査の完了後は、相続人全員で遺産分割協議をおこないそれぞれの相続割合を決めます。

しかし、財産が相続された後に、マイナスの財産が突然見つかるケースも。

相続後に発覚した新たな負債は、法定相続分に応じて相続人に相続されてしまいます。

「相続放棄をしたい!」と思っても、相続放棄の熟慮期間である3ヶ月を過ぎた場合は、原則相続放棄ができません。

マイナス財産の相続放棄は、相続開始後3ヶ月以内の相続放棄申告が鉄則です。

とはいえ、3ヶ月の期間経過後に借金が見つかる場合も…。

「故人の負債を知らなかった」「どうしても相続を放棄したい」といった人は、例外的に相続放棄できる余地がわずかに残っています。

相続放棄の熟慮期間(相続開始後3ヶ月以内)を過ぎた相続放棄は、家庭裁判所に相続放棄の上申書を作成し、申述をおこないます。

熟慮期間を過ぎた相続放棄が、過去に認められた最高裁判所の判例結果(判例:最判昭和59年4月27日)もあるので、希望を捨てずに弁護士等の専門家に相談してください。

故人の財産は完全に洗い出せる?デジタル遺産の危険性とは

デジタル遺産とは、姿・形が見える銀行貯金や不動産とは違い、姿・形がないデジタルで保管している財産です。

IDやパスワードを入力し、会員情報にログインしないと財産状況が把握できません。そのため、財産調査では見つからないデジタル遺産も…。

故人のデジタル遺産を知らずに放置してしまうと、相続人が損害を受けてしまう危険性があります。

特に、相続税の課税対象である仮想通貨やネットバンク口座のデジタル遺産は、相続税の申告が必要です。

財産調査不足によってデジタル遺産を放置してしまうと、相続人に罰金が発生するケースも。

相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内ですが、申告期限を過ぎてしまうと延滞税過少申告加算税等の罰金があります。

遺言書やエンディングノートを故人が遺していない場合は、デジタル遺産まで洗いざらい調査しましょう。

携帯電話やパソコンのメールを細かく確認し、デジタル遺産の有無をしっかり確認してください。

財産調査は税理士への依頼がおすすめ!財産把握はおまかせ相続名古屋へ

相続による財産調査は、相続人がプラスになる財産とマイナスになる財産を把握する大切な調査です。

故人の遺産を相続人が公平に遺産分割ができる場合は、専門家に頼まなくても問題ありません。

しかし、遺産分割で遺族がもめそう、もしくはトラブルになっている場合は、調停や裁判の対応ができる弁護士に財産調査の依頼をしましょう。

「相続税の金額が知りたい」「相続税の延滞金は支払いたくない」といった人は、税金手続きに詳しい税理士への依頼がおすすめです。

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