遺言書の書き方や文例は?自筆から公的証書作成までの注意点も解説

近年は「終活」といった言葉がメジャーになり、自分や家族の最期にむけて遺言書を作成する人が増えています。

「家族に財産のすべてを記しておきたい」「財産分与で揉めたくない」等の気持ちから、前もって遺言書を用意する人がほとんどです。

中には、遺言書があっても無効だったり、故人が遺言書を残していなかったりと、予想もしないトラブルに巻き込まれる人もいます。

この記事では、無効にならない遺言書の書き方やわかりやすい文例を紹介。

遺言書の種類から、注意すべき点まで詳しく解説していきます。

目次

遺言書とは?効力や必要な手続きを知っておこう

遺言書とは、親族への遺産配分や相続に関する故人の想いを、法的効力をもった形で残せる書面です。

遺言書は、自分の財産を、誰にどの割合で相続するのか指定できる書類で、法律の規定に合わせて準備したり手続きしたりする必要があります。

遺言書を自宅で保管している場合は、遺言書を発見したあと、家庭裁判所で「検認」といった手続きが必要です。

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遺言書の検認とは、発見者した人が遺言書を家庭裁判所に提出し、遺言書の内容を確認する手続きです。
検認には、1~3ヶ月程度かかる場合があります。

遺言書に効力をもたせるためには?無効となるケースを紹介

遺言書は、故人の財産を誰にいくら残すのか、明確にできる効力があります。

効力のある遺言書を作成するには、「自筆で作成するもの」「公証人によって作成するもの」「秘密で作成するもの」「緊急時に作成するもの」があり、適切な手続きが必要です。

公証人によって作成された遺言書以外の場合、以下の不備で無効になってしまうケースがあるので紹介します。

遺言書が無効になるケースの例

  • 遺言書に日付が書かれていない
  • 被相続人(故人)の署名・押印がない
  • 正式でない加筆修正がされている(加筆分のみ無効)
  • 15歳未満
  • 認知症等で意思の判断能力がないと認められた場合
  • 介護記録や家族の証言から正常な判断ができないと認められた場合
  • 利害関係者が強制的に遺言を書かせていると疑われた場合

せっかく書いた遺言書に効力をもたせるためにも、正しい書き方と手続きの方法を次項で紹介していきます。

遺言書の書き方は?正しい手順と文例を解説

遺言書には「普通方式」と「特別方式」があり、遺言書の種類や書き方が異なります。

普通方式 特別方式
  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 一般危急時遺言
  • 船舶遭難者遺言
  • 一般隔絶地遺言
  • 船舶隔絶地遺言

ここからは、それぞれの書式に関する特徴やメリット・デメリットも解説していきます。

自筆証書遺言とは?新しい制度の内容も紹介

自筆証書遺言は、自分が手書きで作成した遺言書です。

遺言者本人のみで作成できるため、面倒な手続きや費用をかけずにできるメリットがあります。

他人に遺言内容を知らせずに作成できる反面、遺言書の保管場所(自宅等)を相続人に伝えておかないと見つけてもらえない場合も。

終活で使うエンディングノート等を活用して、家族に保管場所を書き残す必要があります。

デメリットとしては、書式を間違えたり要件を満たさなかったりすると無効となる場合も。また、相続人によって改ざんされてしまう恐れもあるので、正しく作成する必要があります。

令和2年7月から、「自筆証書遺言書保管制度」といった新しい制度が利用できます。

今までは、遺言者が遺言書の原本を管理する必要があり、遺言者が死亡したあとは、家庭裁判所で検認をしなければいけませんでした。

現在では、これまでどおり自宅等で遺言書を保管する方法以外に、法務局へ自筆遺言書の保管を申請できるようになりました(要手数料)。

法務局で保管された自筆遺言書は、家庭裁判所での検認手続が不要となるため、死後すぐに遺言内容の把握ができる等のメリットがあります。

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自宅で保管していた遺言書が紛失・発見されない恐れや、他人が勝手に開封してしまう恐れがなくなります。
他人が故意に破棄したり改ざんしたりしないためにも、新しい「自筆証書遺言書保管制度」は魅力です。

自筆証書遺言の書き方と文例を紹介

自筆証書遺言を有効にするための書き方と文例を紹介します。

自筆証書遺言を満たすための5つの要件

  1. 全文自書
    財産目録以外の部分は、すべて自筆で書く。
  2. 日付の自書
    「○年○月○日」といった日付を自筆で書く。吉日や、年月のみは無効。
  3. 氏名の自書
    遺言者本人と識別できる名前を自筆で書く。
  4. 押印
    遺言者本人と識別できる実印か認印を押印する。
  5. 加除その他の変更
    途中で変更した場合、訂正印を押したあと、変更した旨を付記。
    余白に訂正の内容や加えた文字・削除した文字等を記載する。

自筆証書遺言の文例

自筆証書遺言の文例

自筆証書遺言書は封筒に入れて封印する

自筆証書遺言書を入れる封筒

文例を見ながら、自身にあった内容の明記をしましょう。

別紙には、登記簿謄本にかかれた建物と地番、家屋番号を書いたり、預金であれば銀行の支店名や口座番号を書いたりします。

自筆の場合、申請の遺言に不備があり無効となるケースが非常に多いです。
確実に有効にさせる遺言書を作成するのであれば、次で紹介する公正証書遺言をおすすめします。

公正証書遺言は遺言を確実に残したい人におすすめ

公正証書遺言とは、公証人(裁判官や長年法律関係の仕事に従事した人)が遺言内容を聞き取り、書面にて作成した遺言書。

法律上の過不足もチェックし、遺言書の原本は公証人役場で保管されるため、内容の不備で遺言が無効となるリスクは低く、偽造される心配もありません。

遺言者には、作成された正本と謄本のみ渡されますが、紛失しても原本は残るので無効になりません。

また、公正証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認が不要なので、遺言者の意思をスムーズに反映できるメリットがあります。

公正証書遺言でも、あとから「遺言者本人は認知症だった」と言われた場合、稀に無効となるケースも…。

「遺言書の作成時は意思能力がはっきりしている」とあらかじめ立証しておいたほうが、のちのトラブル回避につながります。

公正証書遺言の作成におけるデメリットは、自分の財産のすべてを公表し、公証人や証人に手数料・報酬を支払う必要がある点です。

自筆証書遺言よりも手間や時間を要しますが、遺言者の意思を確実に残したい場合は公正証書遺言を選びましょう。

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原本は、公証人役場で原則20年(通常は遺言者が死亡するまで)保管されます。作成前に、税理士などの専門家に相談しておくと、複雑な課題点を任せたりアドバイスができるのでおすすめです。

誰にも知られたくない遺言を残すなら秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言内容を誰にも公開せず秘密にしたまま残せる遺言書で、公証人や証人に遺言書の存在のみを証明するものです。

遺言書は公正役場に記録されるので、遺言者本人が書いたものだと証明できます。ですが、積極的に活用されているものではありません。

秘密証書遺言のメリットは、遺言内容を秘密にでき、遺言書の存在を証明できる点ですが、デメリットもあります。

デメリットは、公証人が遺言の内容まで確認できないので、内容に不備があると無効になってしまう場合も。また、遺言の原本は自分で保管する必要があるので、紛失や盗難のリスクもあります。

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秘密証書遺言は、公正証書遺言ほど確実性はなく、さらに一律で11,000円の費用がかかります。
メリット・デメリットを考慮した上で、秘密証書遺言にするか判断しましょう。

秘密証書遺言の書き方・作成手順を紹介

秘密証書遺言のは、手書きでもパソコンでもどちらでも作成が可能です。

秘密証書遺言の書き方は、自筆証書遺言と同様の文例を参考に書きましょう。

秘密証書遺言の作成手順

  1. 遺言書の作成
    遺言者が遺言を作成。遺言書に署名・押印。
  2. 遺言書の封印
    遺言者が遺言を封筒に入れて、遺言に押印した印鑑で封印。
  3. 公証役場で手続き
    遺言者が、公証人と証人(2人以上)の前で封筒を提出。
  4. 公証役場で秘密遺言書を完成させる
    公証人が日付と氏名・住所の申述を封筒に記載。
    公証人、証人、遺言者本人は封書に署名・押印。
  5. 秘密証書遺言の持ち帰り
    公証役場から封印された遺言書を持ち帰り、自分で保管する。
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秘密証書遺言書は、開封する前に家庭裁判所へ検認の請求をしないといけません。相続したい身内には、エンディングノートなどで検認の旨をあらかじめ伝えておきましょう。

特別方式遺言とは?緊急で死が迫った時に作成できる遺言方法

特別方式遺言には、「危急時遺言」と「隔絶地遺言」の2種類があります。

ここからは、「危急時遺言」と「隔絶地遺言」の特徴と遺言を満たす要件について紹介します。

危急時遺言

危急時遺言には、「危急時遺言」と「船舶遭難者遺言」があります。

危急時遺言は、一般危急時遺言、一般臨終遺言、死亡危急者遺言と呼ばれ、病気やケガ等で死亡の危機が迫っている場合に認められる遺言形式です。

一般危急時遺言を満たす要件

  • 3人以上の証人が立ち会い、その1人に遺言の主旨を口授(口頭で伝える)する
  • 口授を受けた証人が、内容を筆記する
  • 筆記した内容を、遺言者および他の証人に読み聞かせる
  • 各証人が筆記の内容が正確だと承認したあと、遺言書に署名押印する
  • 証人は、法定相続人、その他親族、未成年はなれない
  • 遺言書の作成日から20日以内に、証人の1人か利害関係者が家庭裁判所へ請求して確認を得る
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遺言者が普通方式で遺言を残せる状態になってから6ヶ月間生存している場合、一般危急時遺言は無効になってしまいます。

次に、「船舶遭難者遺言」について説明します。

船舶遭難者遺言は、船や飛行機で遭難したり緊急事態があったりした場合に残せる遺言形式です。

船舶の遭難を想定しているため、難船危急時遺言とも呼ばれます。

船舶遭難者遺言を満たす要件

  • 2人以上の証人の立ち会いが必要
  • 遺言者本人が書くのも、証人が代筆するのも、口頭で伝えて筆記してもらうのも可能
  • 証人全員が署名押印をする
  • 証人の1人か利害関係者が家庭裁判所へ請求して確認を得る
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船舶遭難者遺言も一般危急時遺言とおなじく、遺言者が普通方式で遺言を残せる状態になってから6ヶ月間生存している場合、船舶遭難者遺言は無効となります。

隔絶地遺言

隔絶地遺言には、「伝染病隔離遺言」と「在船者遺言」の2種類があります。

まずはじめに、「伝染病隔離遺言」から紹介します。
伝染病隔離遺言は、一般隔絶地遺言ともいわれ、行政の処分で交通の手段を断たれた場合や、伝染病によって隔離された場合の遺言方式です。

伝染病隔離遺言を満たす要件

  • 警察官1人と証人が1人以上立ち会う
  • 遺言書は遺言者が作成する
  • 遺言者、筆者、警察官及び証人が署名押印をする

伝染病隔離遺言は、家庭裁判所への確認が不要です。

ただし、遺言者が普通方式によって遺言を残せる状態になってから6ヶ月間生存している場合、伝染病隔離遺言は無効となります。

次に、「在船者遺言」について解説します。

在船者遺言は、船舶隔絶地遺言ともいわれ、船舶の中にいる場合に認められた遺言方式です。

在船者遺言を満たす要件

  • 船長または事務員1人と、証人2人以上が立ち会う
  • 遺言書は遺言者が作成をする
  • 遺言者、筆者、立会人および証人が、署名押印をする
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在船者遺言も伝染病隔離遺言とおなじく、家庭裁判所への確認が不要です。

遺言者が普通方式によって遺言を残せる状態になってから6ヶ月間生存している場合は、在船者遺言も無効となるので覚えておきましょう。

知っておくべき遺言書の疑問を解決

ここでは、遺言書に関する素朴な疑問を紹介し、回答していきます。

遺言書は勝手に開けると5万円以下の罰金が課せられる?

封がしてある自筆証書遺言、秘密証書遺言を自宅等で勝手に開封すると、5万円以下の過料となります。

この事実を知らずに開封してしまった場合でも、遺言書の効力は失われません。ただし、速やかに家庭裁判所へ持っていき、検認の手続きをする必要があります。

遺言書を見つけたら、誰かに改ざんされないためにも、家庭裁判所で開封する手続きを行いましょう。

遺言書に有効期限はある?

普通方式の遺言書には、有効期限がありません。

特別方式の場合は、普通方式の遺言ができるようになってから6ヶ月間生存すると失効してしまいます。

普通方式の遺言であれば、たとえ20年前のものでも有効ですが、古い遺言よりも新しい遺言のものが有効となります(内容が重複する場合)。

また、古すぎて遺産に大きな相違があったり、巨額の相続税が発生する場合は、すぐに税理士へ相談しましょう。

遺言書の書き方は専門家の相談窓口へ

遺言書は、相続に関する重要な書面で、相続人の人生も左右します。

遺言書がなくても、民法で定められた相続人(法定相続人)で財産を分配できますが、思わぬところでトラブルに巻き込まれる可能性も…。

遺産分割のトラブルを回避し、相続したい人へ希望の遺産を残すには、正しい遺言書の書き方が必要です。

相続したあとの相続税で身内が苦労しないよう、税金の専門家である税理士にあらかじめ相談しておくのもひとつの手段。

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