公正証書遺言の効力は?無効になる落とし穴や遺留分について

効力のある遺言を遺すためには、民法で定められた方式に従って作成しなければなりません。

現在の民法では、公正証書遺言がもっとも無効となるリスクが低く、相続人による偽造や破棄させる心配がないとされています。

公正証書遺言は、財産把握の準備のために手間も時間もかかりますが、信頼度の高い遺言書です。

しかし実際には、効力がある公正証書遺言でも、無効になる落とし穴が存在します。

この記事では、公正証書遺言の効力から無効になる事例まで徹底解説

必ず請求できる遺留分から、トラブルで揉めた時の対処法まで解説します。

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目次

公正証書遺言の効力とは?自分の意志を実行できる効力をもつ

公正証書遺言とは、民法で定められた遺言書のひとつで、公務員である「公証人」が関与し作成します。

遺言書の中でも効力が強い上に、遺言者本人の真意を叶えたい人に向いています。

しかし公正証書遺言とはいえ、何を書いても有効になるわけではありません。

効力が発生する事項(遺言事項)は、民法をはじめとした法律で以下のように定められています。

主な遺言事項

  1. 財産に関すること(相続分の指定遺産分割の指定遺贈寄付信託の設定)
  2. 身分に関すること(婚外子の認知未成年後見人の指定法定相続人の排除)
  3. 遺言執行に関すること(遺言執行者の指定)

正しい公正証書遺言を作るには、法的効力のある遺言事項で作成しないと意味がありません。

「実は婚外子がいます!」といった隠し事の暴露だけを遺言書に記したとしても、遺言事項以外の事柄には効力がないのです。

とはいえ、法定相続人以外の人や婚外子に財産を継がせる場合は、慎重な対策が必要です。

公正証書遺言が無効になるケースとは?事例から学ぼう

「公正証書遺言なら無効になるはずがない!」と思っていても、書面の不備以外で無効になるケースがあります。

ここでは、公正証書が無効になってしまう事例を詳しく紹介していきます。

公正証書遺言が無効になる事例

  1. 遺言作成時、遺言者本人に遺言能力がなかった
  2. 証人として不適格な人が証人だと判明
  3. 詐欺や脅迫等で、遺言者の意思とは異なる遺言内容を作成した

①の遺言能力がないとみなされる要因としては、「15歳未満である」「認知症等で意思能力がない」等があります。

障害の程度が大きかったり、遺言内容が不自然すぎたりすると、遺言能力に疑問が生じて無効になる場合も。

実際、精神障害等で判断能力に疑問が残る人でも、公正遺言書の作成は出来てしまいます。

遺言の作成時は「しっかりと遺言能力があった」と証明したい人は、医師による診断書の明示をしておくのもおすすめです。

②のケースでは、証人が不適格である人だと判断された場合です。

未成年・法定相続人・直系血族・四親等以内の家族・公証人と関係のある人は、証人になれません。

証人の人選でしくじりたくない人は、公証役場で証人を紹介してもらう方法がベストでしょう。

③のケースは、詐欺や脅迫によって遺言者本人が意図しない遺言なので、当たり前ですが無効となります。

しかし、「詐欺や脅迫で遺言を作らされたに違いない」といった事実を証明するには、かなりの労力と時間がかかります。この場合は、迷わず専門家に相談しましょう。

しかし、「詐欺や脅迫で遺言を作らされたに違いない」といった事実を証明するには、かなりの労力と時間がかかります。この場合は、迷わず専門家に相談しましょう。

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公正証書遺言の効力にまつわるトラブルを紹介!遺留分の請求とは?

公正証書遺言に効力があるとはいえ、スムーズに相続できないケースがあります。

例えば、特定の相続人には遺産の一切を相続しないと遺言に遺した場合です。

しかし相続人には、必ず遺産がもらえる権利の「遺留分」があるため、遺留分をめぐる相続トラブルがよくあります。

次の項では、遺留分に関する具体的な相続割合について紹介します。

遺留分は公正証書遺言でも請求できる!事例を紹介

遺留分とは、相続人に保証される最低限の財産で、遺言者の配偶者・直系尊属(両親、祖父母など)・直系卑属(子ども、孫など)のみ認められています。

そして、遺留分割合については、直系尊属のみが3分の1、その他は2分の1です。

遺留分が認められている立場の人に1円も相続されなかった場合、その人は遺留分を請求できる権利があります。

ここでは具体的な例を上げて、遺留分を請求した人が最終的にいくら受け取れるのかを紹介します。

【例】

家族構成:遺言者(父:本人)・相続人(妻:他界)・子(姉)・子(弟)

被相続人である父が、子(姉)に全財産(1,000万円)を相続すると遺言書に記載した。

子(弟)が遺留分の請求をした場合の金額が知りたい。

遺留分を解説する画像

【遺留分の計算方法】

相対的遺留分×法定相続分=個別遺留分

相対的遺留分は、相続全財産の2分の1と決められています。

今回のケースでは遺言者の配偶者は既に他界しているため、法定相続人は子(姉)と子(弟)の2人です。

子は直系卑属であるため、法定相続分は2分の1として計算します。

上記を踏まえると、弟が請求できる遺留分は以下の計算で算出できます。

1,000万円×1/2×1/2=250万円

つまり、子(弟)に認められた遺留分は250万円です。

相続法の改正により、子(弟)は子(姉)に対し、金銭で250万円の請求ができます。

遺留分の対策としては、あらかじめ子(弟)に遺留分の金銭を準備するか、一定割合の財産を相続する等の手段があります。
遺留分の請求は、相続人同士でトラブルになりやすいため、専門家に相談しておくといいでしょう。

公正証書遺言の効力が無効に?揉めた時のトラブル対処法を伝授

効力をもつ公正証書遺言とはいえ、故人の隠し子や縁を切っている相続人から、突然遺留分の請求がきて揉めるケースは少なくありません。

他にも、相続が不利だと感じている相続人が、「故人の公正証書遺言は無効だ!」と主張してくる場合があります。

ここでは、公正証書遺言の効力で揉めた時の対処法を紹介していきます。

①他の相続人と交渉・意見の確認

自分の知らない相続人から遺留分の支払い請求がきた場合、しっかりと話し合う必要があります。会ったことない相続人とはいえ、調べればわかるので無視はできません。

また、「この遺言書は無効だ!」と主張する相続人がいる場合は、相続人全員で本当に無効なのか協議します。相続人全員が納得する形に着地することが最も大切です。

②訴訟を提起する

相続人同士の交渉で解決しない場合は、裁判所へ出向き、遺言書の無効確認訴訟をおこないます。
その際は、弁護士等の専門家に相談し、訴訟に不備がないよう準備しなくてはいけません。

公正証書遺言の効力で揉めた場合は、弁護士や税理士等の専門家の力をかりましょう。不満を抱く相続人もいるはずなので、相続人全員が同意見で納得できる方向性にもっていく手段が大切です。

遺言検索システムとは?遺言書の存在有無がわかる優れもの

突然の交通事故や病気等で被相続人(遺言者本人)が急死した場合、被相続人に遺言書があるかどうかは知るよしもありません。

遺言書がない、もしくはあると知らない場合は、法律に基づいた法定相続人で遺産を相続します。

しかし相続人が多いと、金銭トラブルに発展しやすいのも事実。

平成元年以降に作成された公正証書遺言に関しては、「遺言検索システム」といった方法で、遺言書の有無を調べられます。

遺言書の存在がわからない場合は、最後の砦として「遺言検索システム」を利用してみてください。

「遺言検索システム」は、全国にあるどの公証役場でも検索が可能。遺言書の存在が特定できたら、原本を保管している公証役場へ行き、公正証書遺言書が受け取れます。とても優れたシステムなので、忘れずに検索してみてください。

効力をもつ公正証書遺言のメリットとデメリットは?確認すべきポイントを紹介

ここでは、公正証書遺言におけるメリット・デメリットを詳しく解説していきます。

公正証書遺言のメリット

1.方式の不備で遺言が無効になる恐れがない

遺言書には法律で決められた書き方や手続きがあります。決まった方式に沿っていない遺言は無効となるため、内容の間違いや押印の不備などに注意が必要です。

公正証書遺言の作成時に必要な公証人は、裁判官や検察官、弁護士の経験をもつ法曹資格者や、それに準ずる学識経験者が選任されます。

そのため、複雑な遺言内容でもきちんとした遺言書を作成してくれるため安心です。

2.遺言者の自筆が不要

公正証書遺言では、体力の低下や病気で自筆が困難となった場合でも作成が可能です。

遺言者のかわりに、公証人による署名の代署、押印が認められています。

3.公証人が出張してくれる

遺言者本人が、病気等の理由で公証役場へ足を運べない場合、公証人が遺言者の所在地まで出張してくれます。

高齢で体力が弱ってしまった人や、老人ホーム、介護施設に入っていても、公正証書遺言の作成が可能です。

4.遺言書の検認が不要

公正証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所でおこなう検認の手続きが不要です。

手間がかかる検認を挟まないため、相続をスムーズに開始できます。

5.原本の役場保管・二重保存

遺言書の原本は、原則20年間は公証役場で保管されるため、第三者による偽造・破棄をされる心配がありません。

自宅等で原本を保管しなくてもいいので、改ざんされたり隠されたりする心配も不要です。

また、震災等で公正証書遺言の原本や謄本がすべてなくなってしまっても、電子データとしての復元が可能。

公正証書遺言は、役場保管と電子データの二重保存ができる仕組みになっています。

公正証書遺言のデメリット

1.証人が2人必要

公正証書遺言は、公証人以外に、証人を2人以上用意する必要があります。

公証人と違って証人は法曹資格がなくても可能ですが、秘密裏で相続人が不利とならないよう、自分の遺産とは無関係な人がおすすめです。

ただし、未成年や法定相続人、遺産を引き継ぐ人、四親等以内の親族は証人になれません。

自分で証人を探せない場合は、公証役場で紹介してもらえます(有料)。

2.遺言内容を公証人や証人に知られる

公正証書遺言は、公証人と証人が遺言内容を把握するため、遺言内容を秘密にできません。

全財産や相続人の全貌が明らかになるので、プライバシーの面で作成を断念する人も…。

しかし、公証人には守秘義務があり、証人も守秘義務に準じます。

遺言内容を誰にも知られたくない場合は、自筆証書遺言秘密証書遺言がおすすめです。

3.手数料がかかる

公正証書遺言の作成には、政令で定められた手数料が必要です。

遺言の財産価格によって、手数料が異なる仕組みとなっています。

公正証書遺言と自筆証書遺言の効力の違いは?無効になる危険無効となる危険性がないのはどっち?

遺言を作成する際、ほとんどの方が公正証書遺言か自筆証書遺言かで悩みます。

公正証書遺言と自筆証書遺言には明確な違いがあるので、どちらが自分に合うのかしっかり確認してください。

自筆証書遺言 公正証書遺言
無効になるリスク 法的な不備があると無効の可能性あり 書類の不備で無効になる恐れがない
自筆の有無 必ず自筆で作成(財産目録以外) 自筆が難しい場合、代署が可能
証人の有無 不要 2名必要
検認の有無 必要
(遺言書保管制度を利用した場合は不要)
不要
保管場所と破棄・
隠匿の可能性
自宅等
破棄・隠匿の可能性あり
公証役場
破棄・隠匿の可能性なし
費用 筆記具代のみ
(遺言書保管制度を利用の場合は
1件につき3,900円)
政令で定められた手数料が必要
(遺言に記載する財産の価格で
手数料が異なる)

手数料や手間を考えたら、自筆証書遺言がおすすめです。しかし、無効になるリスクを考えると、公正証書遺言の一択。

どちらにも利点はあるので、選べない場合は専門家に相談し、自分に合う遺言方法で相続しましょう。

効力のある公正証書遺言を作成するための必要書類は?提出書類を一挙紹介

公正証書遺言を作成するには、以下の書類が必要です。
住んでいる市町村の役所へ出向けば、取得できる書類となっています。

  1. 3ヶ月以内に発行した遺言者本人の印鑑登録証明書
  2. 遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本
  3. 相続人以外の人に財産を相続する場合、その人の住民票
  4. 財産に不動産がある場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)と固定資産評価証明書(もしくは固定資産税都市計画税納税通知書中の課税明細書)
  5. 自分で証人を準備した場合、証人予定者の住所生年月日職業をメモしたもの

上記の書類があれば、公証人や専門家との打ち合わせがスムーズに行えます。

有価証券等の財産が別にある場合は、財産を証明する資料が追加で必要です。

公正証書遺言の効力を執行するための手順は?作成時の流れを解説

公正証書遺言を執行するためには、事前準備がとても大切です。

スムーズに作成できるよう、準備時の手順から作成当日の手順まで時系列で紹介します。

順番 項目 内容
1 公証役場へ連絡
公証人に相談・依頼
証人2人の準備
遺言者本人か親族等が、最寄りの公証役場へ訪問・電話をする。
公証人に遺言書作成の相談・依頼をし、打ち合わせの予約をする。
専門家を通じて依頼も可能。
証人2人の準備。
2 遺言内容のメモと必要書類の提出 遺産を誰に相続させるのかがわかる遺言内容のメモを公証人へ提出する。
遺産内容のメモを執行するために必要な書類を公証人に提出。
3 公正証書遺言案の作成・確定 公証人は、遺言者本人が希望とする遺言内容の案を作成。
遺言内容の案は、メール等で依頼者に提示。
遺言の修正箇所がないかチェックし、修正があれば公証人が再度作成。
最終的な遺言内容の案を確定する。
4 公正証書遺言の作成日時を決める 公正証書遺言の案が確定した状態で、遺言者本人が公証役場へ行き、遺言書の作成日時を決める(もしくは公証人に出張してもらう)。
5 公正証書遺言の作成日当日 遺言者本人は、公証人と証人2人の前で遺言内容を口頭で告げる。
公証人は、遺言者本人に判断能力があるか確認。
その後、公証人は遺言書の原本を遺言者本人及び証人2人に読み聞かせるか閲覧させる。
遺言書原本に間違いがないか確認の上、遺言者及び証人2人は署名・押印。
最後に、公証人が遺言書原本に署名・押印して完成。

公証人には守秘義務があり、依頼した遺言内容を秘密にしなければなりません。

また証人は、遺言者が遺言書を作成した事実や内容を、「他人に漏らしません」といった意思表示が必要です。

証人には、民法上の秘密保持義務を負ってもらうので、遺言内容が外部に漏れる心配はありません。

公正証書遺言の原本は、遺言者本人の死後まで公証役場にて厳重に保管されます。
遺言内容が、第三者に知られたり、破棄されたり等のトラブルがないのも公正証書遺言の特徴です。

公正証書遺言を作成する場合、①公証役場、②証人、③書類取集に関する費用や手数料が発生します。

それぞれにかかる費用・手数料は次の通りです。

1.公証役場に支払う手数料

公正証書遺言を作成するには、政府が定めた「公証人手数料」を、原則現金で支払う必要があります。

遺言の財産の価格 基本手数料
100万円以下 5,000円
100万円~200万円以下 7,000円
200万円~500万円以下 11,000円
500万円~1000万円以下 17,000円
1000万円~3000万円以下 23,000円
3000万円~5000万円以下 29,000円
5000万円~1億円以下 43,000円
1億円~3億円以下 43,000円+超価格5000万ごとに13,000円加算
3億円~10億円以下 95,000円+超価格5000万ごとに11,000円加算
10億円以上 240,000円+超価格5000万ごとに8,000円加算
遺言者が病気等で公証役場に行けない場合の出張手数料
出張手数料は、手数料が1.5倍。他にも、旅費(実費)、日当(4時間まで1万円、4時間以上2万円)が必要です。

2.証人に支払う手数料

証人を自分で手配する場合は、公証役場へ支払う必要がありません。手配した証人へ、自由に決めた謝礼を支払いましょう。

自分で手配できない場合は、公証役場で証人を紹介してもらえます。

明確な金額は各公証役場によって異なりますが、証人1人につき10,000円前後の手数料が相場です。

証人への手数料は、直接証人に支払います。

3.書類収集にかかる費用

遺言書に添付する財産を証明するには、戸籍謄本・不動産登記謄本・印鑑登録証明書等の書類が必要です。

書類にかかる費用は、5,000〜10,000円程度が相場です。

公正証書遺言を作成しても、遺留分(法定相続人に最低限保証される権利)を無視してしまうと、遺留分の請求が行使される場合も。
遺留分は金銭で用意する必要があるので、法定相続人に相続しない場合は、税理士等の専門家に相談しましょう。

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遺言者本人が希望する相続を執行するために、もっとも有効な遺言方式は公正証書遺言です。

無効になるケースのポイントさえ回避すれば、希望の相続が執行できます。

しかし、遺言者に税金の知識がないと、相続税で相続人が困る場合も。

遺言を作成するときは、相続人や遺産の割合だけでなく、相続税の金額も算出する必要があります。

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