自筆証書遺言の書き方は?ひな形や無効とならない注意点も解説

「遺言書を書きたいけど正直書き方がわからない…」といった悩みは、誰もが抱く悩みのひとつ。

遺言書の作成は、遺族への相続をスムーズにおこなうために有効な手段です。

自筆証書遺言は名前のとおり、遺言者が自筆(手書き)で作成する遺言書で、厳格な要件を満たす必要があります。

しかし、実際には書類の不備で無効になったり、遺族に見つけてもらえなかったりするケースもあり注意が必要です。

この記事では、自筆証書遺言を正しく書くためのひな形や注意点を詳しく解説!

自筆証書遺言を安く保管できる方法から、メリット・デメリットまで紹介します。

目次

自筆証書遺言とは?効力をもつために気をつける点は?

自筆証書遺言とは、遺言者が自筆(手書き)で書く遺言書です。

民法第968条第1項では、「自筆証書遺言を作成する場合、遺言者が遺言書の全文・日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定めています。

しかし第2項には、財産目録のみ自筆が不要とあるため、一部パソコンでの入力が可能です。

「家族が相続で揉めてほしくない」「希望する財産分与がしたい!」といった気持ちから、自分で書ける遺言書が自筆証書遺言。

遺言者本人の自筆ではなく、代筆で書かれた場合の遺言書は無効になるので注意が必要です。

遺言書に効力をもたせるためには、全文(財産目録以外)・日付・氏名を自筆し、それに押印するといった要件をすべて満たす必要があります。

自筆証書遺言を書くためのステップは?保管するまでの流れを紹介

ここでは、自筆証書遺言を作成するための流れを紹介していきます。

STEP① 相続する財産の書き出し

相続する財産の洗い出しをしていきます。

財産の例

  • 不動産(土地・建物)
  • 預貯金口座
  • 株式
  • 投資信託

など

STEP② 財産の資料を集める

財産を証明する資料を集めます。

資料の例

  • 不動産(土地・建物)の場合、登記簿謄本や固定資産税の証明書・納税通知書
  • 預貯金口座の場合、通帳や実印
  • 株式の場合、取引残高報告書
  • 投資信託の場合、残高証明書

これらは、財産目録を作成する際に必要な書類です。

細かい情報まで記載しないと無効になるので、資料は必ず集めましょう。

STEP③ 相続したい人を決める

自分の財産を、誰に相続したいか決めます。

法定相続人以外でも、遺言書に相続したい人を記載すれば相続が可能です。

STEP④ ひな形に沿った遺言書の自筆

STEP③までの準備ができたら、ひな形に沿って自筆で書いていきます。

自筆証書遺言は、自宅等で保管する方法と、法務局で管理・保管する(自筆証書遺言書保管制度)方法があります。

法務局で管理・保管する場合、決まった様式に合わせる必要があるので、あらかじめ保管制度の様式に合わせて書くといいでしょう。

自筆証書遺言書保管制度の様式

  • 消えない筆記具(ボールペン・万年筆)を使用
  • 日本産業規格A4・A5・B5」の紙(模様や彩色がないもの)使用
  • 長辺方向の余白がいずれも20ミリ以上あけて記載

STEP⑤ 遺言書の保管場所を決める

自筆証書遺言に不備がないか確認したら、保管場所を決めます(自宅や法務局など)。

家族や信頼できる専門家に保管をお願いしたり、エンディングノートに保管場所を書いたりしておきましょう。

自筆証書遺言書保管制度とは?法務局に保管できる新たな制度

令和2年7月10日より、法務局(遺言書保管所)で自筆証書遺言を保管できる制度がスタートしました。

この制度は、第三者による遺言書の改ざん・悪用を防げるメリットがあります。

保管申請の手数料は、遺言書1通につき3,900円で、収入印紙を購入して納付します。

一旦保管申請した遺言書は、遺言者本人が申請の撤回をしない限り、返却されません。

この世を去ったあとまで、自分の遺言を守りたい人におすすめです。

自筆証書遺言を有効にするための書き方は?気をつけるべき5つの要件

自筆証書遺言を有効にするためには、5つの要件を厳守する必要があります。

どれかひとつでも要件が欠けてしまうと、遺言が無効になってしまうため注意しましょう。

 5つの要件

  1. 本文はすべて自筆
  2. 日付の自筆
  3. 署名の自筆
  4. 押印
  5. 加除その他の変更は、その旨の追記・署名・押印が必要

1.【本文はすべて自筆】財産目録以外は手書きで

遺言書には、「本文」と「目録」があります。手書きで書くのは「本文」で、遺言者本人の筆跡が必要です。

財産のみをまとめて記す「目録」に関しては、法の改正により現在はパソコンでの入力が認められています。

2.【日付の自筆】日付は正確に書く

遺言書には、令和◯年◯月◯日といった日付が必要です。

過去に遺言書を作成していた場合は、新しい日付の遺言書に効力があります。お祝い時などで使う「令和◯年◯月吉日」といった書き方は無効になるので気をつけてください。

3.【署名の自筆】手書きで氏名を書く

遺言書の「本文」と「目録」には、それぞれ遺言作成者自身の署名が必要です。

4.【押印する】実印でも認印でも可能

遺言書の「本文」と「目録」には、必ず押印が必要です。印鑑は、実印でも認印でも構いませんが、実印を持っていれば実印を押しましょう。

5.【加除その他の変更を記載】変更した旨を、書面に追記・署名・押印する

「加除」には、加えたり除いたりするといった意味があります。

遺言書では、一度書いた遺言内容を追記したり、削除したり、変更したりする時に署名・押印が必要です。

つまり、訂正箇所に訂正印を押し、訂正箇所の指示を欄外に記載・署名までおこなわないと無効になってしまいます。

①~⑤の要件すべてを満たしてこそ、効力をもった遺言書となります。特に「財産目録」では不備が見つかりやすいので、専門家にチェックしてもらいましょう。

自筆証書遺言のひな形は?例文を紹介

自筆証書遺言のひな形と、注意事項を紹介します。
【本文】
自筆証書遺言のひな型
自筆証書遺言の封筒
【目録】
自筆証書遺言の目録

遺言書の様式の注意事項

 

  • 遺言者の氏名は、民法上本人と特定できればペンネームでも可能です。ただし、自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、戸籍どおりの氏名を記載します。
  • 財産目録は自筆しなくても構いませんが、用紙が複数ある場合はすべての用紙に署名と押印が必要です。
  • 「本文」と「目録」の通し番号を、各用紙に記載します。
    (例 2枚ある場合・・・1/2、2/2)

 

法務局で自筆証書遺言書の保管を依頼する際、遺言書の内容に関する相談までは応じてもらえません。財産目録や相続税に関する相談は、あらかじめ税理士等の専門家に相談しておきましょう。

自筆証書遺言は法務局で保管がいい?デメリット・メリットを解説

ここでは、自筆証書遺言のメリットからデメリットまで紹介していきます。

メリット デメリット
  • 遺言書の作成に費用がかからない
    (法務局に保管する場合は1通3,900円)
  • ひな形に沿って書けば手軽に作成できる
  • 遺言内容を誰にも知られない
  • 遺族が家庭裁判所へ行き「検認」をしてから開封
    (法務局に保管する場合、検認は不要)
  • 要件を満たさないと無効になる場合がある
  • 身内や家族に遺言書を見つけてもらえない可能性がある

自筆証書遺言のメリットは、紙・封筒・ペンがあれば手軽に作成できるところ。

自宅で保管する場合、誰にも見られずに作成できるため、財産目録を公にしたくない人に向いています。

反対に、要件をすべて満たしていないと無効になってしまったり、家族に遺言書を見つけてもらえなかったりするケースもあります。

遺言の有無で遺族が揉めないよう、エンディングノートも一緒に作成し、保管場所をわかりやすく書いておきましょう。

自筆証書遺言の一番の利点は、自筆証書遺言の保管ができる点です。

1通3,900円で保管できる反面、封はせずに用紙を持参するため、法務局の担当者に遺言内容がチェックされます。

しかし、きちんと要件を満たしているかどうかのチェックなので、遺言を無効にさせたくない人にはぴったりです。

「もっと費用がかかってもいいから、リスクなく遺言の希望を叶えたい」といった人には、公正証書遺言がおすすめ。
公正証書遺言は、遺言登録検索システムで管理ができるため、遺言書があるかないかも調査できて便利です。

自筆証書遺言は検認が必要?注意点をまとめて紹介

自筆証書遺言では、以下の点に注意する必要があります。

1.保管制度を利用しない場合は勝手に開封しない

自宅で遺言書を保管していた場合、遺族は遺言書を勝手に開封できません。

開封前に、必ず遺言書の内容や状態を確認する「検認」を家庭裁判所で受ける必要があります。

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、「検認」の必要がないので、スムーズに遺言の内容がわかります。

2.あいまいな表現で書かない

相続したい財産を、「譲る」「任せる」ではなく、「相続させる」「取得させる」等の明確な表現にします。

財産目録では、住所や登記に関して正確に特定できるよう、細かく書いてください。

3.相続分がなくなる場合もある

「遺言書を作成したときは株式があったのに、相続開始後は株式が紙切れになっていた…」といったケースもあります。

その場合、失われた財産は無効で、残っている財産のみ有効です。

株のように変動する財産を相続された人は、いつかなくなってしまう可能性もあるので、しっかり考えてから作成しましょう。

自筆証書遺言が無効になってしまうケースを紹介

ここでは、自筆証書遺言でありがちな不備や、遺言執行上で問題が発生する事例を紹介します。

よくある間違い①
不動産の所在地を、住所で書いてしまった

普段、郵便が届いたり宅配に使われたりする住所は、市町村が定めているものです。

財産目録に記載する不動産の所在地は、「登記事項証明書(不動産登記簿)」に書かれているとおりの所在地(地番や家屋番号)で書く必要があります。

よくある間違い②
総合(普通+定期)口座で定期預金分を書き忘れた

金融機関の総合口座を財産目録に書く際、普通預金分は受取人を記載し、定期預金分の受取人を記載し忘れるケースがあります。

この場合、定期預金分は誰にも相続されず、協議の対象になってしまうので気をつけましょう。

よくある間違い③
前の配偶者との子供に対する相続を書き忘れた

前配偶者との間に子供がいる場合、その子供は相続の対象です。

例えば、「再婚後の妻や子に全財産を相続させる」と書いても、前妻の子には遺留分(相続人に継承されるべき最低限の割合)の権利があります。

前妻の子は遺留分の請求ができるため、遺言者本人が「前妻の子とは縁を切っている」と思っていても、遺留分の請求は認められます。

相続が開始されたあとに、「遺留分を請求された!」「隠し子がいた!」といったトラブルにならないよう、事前に専門家に相談しておきましょう。

専門家のサポートがおすすめ!トラブルや相続税で悩まないために

自筆証書遺言は、自分で簡単に作成できる反面、無効になるリスクもあります。

相続には、民法で決められた相続割合(法定相続)があるので、家族が揉めずに相続できたら理想です。

しかし、遺言者本人の希望で、特定の人に法定相続分よりも多く相続したい場合、別の相続人が後から訴えるケースも…。

他にも、遺言者本人がよかれと思って預貯金をそのまま相続した結果、家族が多額の相続税を支払った事例もあります。

予期せぬことで家族がトラブルにならないよう、自筆証書遺言の作成は専門家にサポートしてもらいましょう。

\遺言書の作成には専門家のサポートが大切/
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる